第49回藤森栄一賞選考結果
長野県考古学会は、藤森栄一賞選考委員会を2025年2月28日(金)に開催した。全国推薦委員・選考委員から推薦された個人11名を受賞候補として慎重な審査と意見交換を行った結果、全会一致で林直樹氏を第49回藤森栄一賞受賞者として決定した。
林直樹氏は明治大学文学部卒業後、岐阜県の公立高校教員から埋蔵文化財調査担当として市町村に出向し、発掘調査や資料整理の成果を基に飛騨みやがわ考古民俗館建設及び展示に尽力した。その後、岐阜県立関高等学校に赴任し、同校の地域研究部の顧問として高校生とともに飛騨地域から中濃地域の考古学的な調査・研究活動を精力的に行っている。
林氏の学術的な研究業績としては、飛騨市塩屋金清神社遺跡の調査をはじめとして、膨大な量に及ぶ出土資料の分析から縄文時代の精神世界を司る石棒の製作過程や儀礼の痕跡を明らかにし、北陸、中部地方における石棒流通の原点ともなった生産地遺跡の実態を解明したことが高く評価されている。また、林氏は飛騨地域の旧石器〜縄文時代の調査を進め、『岐阜県史』編集に関わったほか、宮ノ前遺跡で全国的に貴重な旧石器時代の有機質遺物の検出に成功し、研究成果に基づき、飛騨地域を代表する資料として評価を受けた縄文時代の各遺跡の出土資料とともに県重要文化財指定に繋いだ。さらに、研究の領域としては東アジアの考古学史についても造詣が深く、現地踏査も踏まえた成果を多く発表している。
それらとともに林氏の業績を大きく特徴づけるのが高校の「地域研究部」顧問としての活動である。高校生とともに遺跡の現状調査を行い、聞き取り調査から民俗学的な研究、実験考古学的な探求など、多角的な視点から郷土の歴史を掘り起こし、実態が埋もれつつあった中世城郭や戦争遺跡の詳細を明らかにした。
フィールドに実在する歴史資料に触れる姿勢を重視し、研究成果を積極的に地域に還元する活動は、林直樹氏の教育の実践であり、多世代にわたる地域住民の共感を呼んでいる。それは近隣自治体と連携した文化財保存・活用にも繋がっている。学びの輪には多くの小中学生も集まり、「地域研究部」出身の高校生からは、大学で考古学や歴史学の研究に進む若者が輩出されるなど、次世代の継承者育成にも貢献している。
このような地道な地域研究の成果と、歴史遺産の担い手となる生徒達の教育活動は、考古学界のみならず教育界からも高く評価されている。さらには郷土の歴史に対する一般市民の関心を促し、地元でのシンポジウム等の開催に繋がり、高い社会的評価を得ている。
以上のような研究および教育普及活動は、地域史を広い視野から考古学的に探究し、その継承者として多くの若い世代を育成した藤森栄一を記念する本賞に相応しいものであると評価し、ここに林直樹氏を第49回藤森栄一賞の受賞者として決定するものである。
2025年3月30日
長 野 県 考 古 学 会
藤森栄一賞選考委員会
委員長 橋 龍三郎