2026年03月30日

第50回藤森栄一賞選考結果について(報告)

 

50回藤森栄一賞選考結果

 

長野県考古学会は、藤森栄一賞選考委員会を2026328日(土)に開催した。全国推薦委員・選考委員から推薦された個人9名を受賞候補として慎重な審査と意見交換を行った結果、全会一致で風間栄一氏を第50回藤森栄一賞受賞者として決定した。

風間栄一氏は早稲田大学大学院修士課程を修了後、長野市教育委員会文化財課で埋蔵文化財保護業務に長年にわたり従事している。特に積石塚や合掌形石室の代表的事例として知られる国史跡大室古墳群の整備事業の担当者として同古墳群の発掘調査や整備事業に携わっている。

風間氏は、近年の新出資料や研究成果を論理的に整理し、積石塚は渡来系という学説には再考の余地があることや、渡来系と考えられてきた合掌形石室の築造年代が5世紀代に遡り、日本の古墳文化の中で創り出されたものと考えられるとの見通しを示した。これは1960年代以降、半世紀を経た今日に至るまで未だ解明されていない、「長野県の考古学研究上の古くて新しい命題」とされる積石塚研究において、今後の新しい展開を期待させる重要な成果である。

また、古墳時代のシナノを語るうえで継体王朝期の斯那奴(科野)氏に注目して、その集団のルーツを下伊那・飯田古墳群に想定、あるいは大室古墳群にも可能性を見出すなど、長野県の古墳研究を、列島内各地の有力豪族の古墳群と比較し、さらに半島の古墳文化にも目を開くなど、信濃の古墳に限らない幅広くかつ斬新な研究を精力的に進めている。

このように、古墳時代研究を深化させる多数の論文を毎年発表し、シナノの古墳編年観を整理・提示したほか積石塚に関する新たな研究成果を創出するなど、古墳研究者として揺るぎない地位を築いている一方、広く市民向け講演をするなど普及活動も行うなど、地域の文化財保護への貢献と研究者としての先進性の両輪を備えている。

以上のような活動は、地域の文化財の重要性を唱え、既成の概念にとらわれない斬新な研究や活動の実践者であった藤森栄一を記念する本賞に相応しいものであると評価し、ここに風間栄一氏を第50回藤森栄一賞の受賞者として決定するものである。

 

         2026328

長 野 県 考 古 学 会

  藤森栄一賞選考委員会

委員長 橋龍三郎

 

 

50回藤森栄一賞選考結果

 

長野県考古学会は、藤森栄一賞選考委員会を2026328日(土)に開催した。全国推薦委員・選考委員から推薦された個人9名を受賞候補として慎重な審査と意見交換を行った結果、全会一致で吉川耕太郎氏を第50回藤森栄一賞受賞者として決定した。

 吉川耕太郎氏は明治大学大学院修士課程を修了後、秋田県埋蔵文化財センター、秋田県教育庁、秋田県立博物館、秋田県教育庁払田柵跡調査事務所を経て、秋田県教育庁生涯学習課文化財保護室埋蔵文化財・世界文化遺産チームのチームリーダーを務めている。この間、県内の遺跡発掘調査をはじめ、博物館の企画・展示やボランティア組織の立ち上げ、国際交流事業への従事などの文化財保護業務や普及啓発活動等に携わっている。

吉川氏は、長年にわたり東北地方をフィールドとして、旧石器時代から縄文時代の石材資源開発の観点から石器研究を進めている。石材の選定から製作、そして使用から遺棄・廃棄に至るまでの過程を総合的に捉え、当時の社会構造や人々の生活様式の復元を試みるとともに、東北地方の珪質頁岩や黒曜石の産地探索調査を実施した。このような石材産地と遺跡との関係について具体的な分析手法に基づき、地域性とその変動を描き出そうとする意欲的な試みは、東北地方の先史考古学研究に新たな地平を開き、東北地方の石器と石材資源開発の研究を大きく発展させたと評価できる。

また、地域の児童生徒への考古学指導や、地元紙への寄稿・連載、各種審議会等の委員、さらには美術大学での指導を通じたアートと考古学の融合など、多彩かつ幅広い活動に取り組んでいる。住民と連携しながら考古学の成果を地域に還元し、埋蔵文化財を核とした地域の活性化に挑み続け、これらを通じて地域住民の考古学に対する関心を高め、文化財保護意識の向上に大きく貢献している。

以上のような活動は、地域の文化財の重要性を唱え、既成の概念にとらわれない斬新な研究や活動の実践者であった藤森栄一を記念する本賞に相応しいものであると評価し、ここに吉川耕太郎氏を第50回藤森栄一賞の受賞者として決定するものである。

 

         2026328

長 野 県 考 古 学 会

藤森栄一賞選考委員会

委員長 橋龍三郎

 

 2026藤森栄一賞受賞者一覧.pdf

posted by 長野県考古学会事務局 at 23:43| 藤森栄一賞